『民泊について考える』

埼玉滋賀県人会会長 山田 正


  2018年6月15日に住宅宿泊事業法が施行されたのを受けて、この6月29日にお茶の水にある
明治大学グローバルフロントホールで表題のシンポジウムを開催した。200名収容のすり鉢型の
ホールで、使用料は半日6万円もする会場である。100名ほどが集まってくれた。京都からこれに
参加するためだけに上京する人がいた。  
  私は『地域マネジメント学会』には埼玉滋賀県人会を立ち上げる前から所属していて、周りがやめ
ていき、気が付いたら私が企画・事業委員長をさせられていた。  
  テーマも講師陣も集客も当日の運営も全て自分でやらないといけない。東京滋賀県人会の静永
会長は日中国交回復交渉のとき、田中角栄と周恩来・毛沢東の対談を撮影するクルーの隊長を
務めた人で、国交省には太いパイプをもっておられる。静永会長の尽力で観光庁観光産業課長の
基調講演講師がすんなりと決まる。  
  東京都大田区は2年半前から『特区民泊』として先行しており、生活衛生課長にもその現状を
パネラーとして発表してもらった。  
  民間からは、「不動産経済研究所」社長と「マンション管理研究所」代表にもパネラーとして参加し
てもらう。  
  4時間の時間内で4人の講演をいただき、会場の質問を受けて、受講者にどんな問題点があるの
かを感じてもらうのは至難のわざである。私の責任は時間管理で講師に持ち時間をきっちり守らせ
ることである。「あと5分」、「あと2分」のビラを見せるのは嫌な役ではあるが、お陰で1分もたがわ
ず、予定終了時間に終えることができた。  
  「民泊」は外国人だけでなく、日本人も使用できる。旅行だけでなく長期入院患者の外部宿泊訓練
やその家族の滞在拠点にも利用でき、社会的な機能としての役割も期待されている。  
  この学会のシンポジウムには埼玉県の上田知事にも2度講師として来場してもらっている。今回も
当会の16号の会報を送る封筒の中に新たな提案書を同封した。  
  その内容は愛知県知事が昭和53年から全国県人会組織を提案して、現在38の道県人会が
加入・参加して9月の第2土・日に「ふるさと全国県人会まつり」が開かれる。去年は名古屋市内の
会場に2日間で21万3000人が参加したという。当然名古屋滋賀県人会も参加している。長浜市
から地ビールや甲賀市から忍者が出て好評だった。  
  埼玉県側からすれば我々は外国人である。長野、新潟、山形からの流入者も多いはず。
  私は一度本物の秋田の「いもに」をイベント会場で味わってみたい。  
  埼玉県でもそんな企画を試みてもらいたいと知事に申し出たところ、埼玉県庁の観光課長から
「話が聞きたい」ということで7月9日に登庁することになった。申し出るのは3度目である。  
  今年は日本の『開国』からちょうど150年、開国を指揮した井伊直弼は反対派の浪士に暗殺され
たが、井伊藩の藩校に学んだ者にとって、今回の民泊解禁は第2の開国で歓迎したい。150年前
に開国して日本は豊かにはなったが、心情的には外国人に対して今だ心を開いているとは思えな
い。特に東南アジアの人たちには蔑視の差別意識がどこかにありそうである。やはりなくなるのに
100年はかかりそうである。  
  民泊新法は空き家対策ではなく、地域が見知らぬ人を受け入れて同化していく戦略である。
埼玉滋賀県人会の将来も、同じ路線の中にあるように思える。

2018年7月1日