38年振りのボートレース


 令和 1年7月
西村 登喜男(戸田市在住)
  瀬田工校に入学してボートを漕ぎ始めて50年が過ぎた昨年、昨今盛んになって来たマスターズレガッタに私も参加しようと思いました。29歳でレース活動を終えて今年で38年、仕事としてボートを見てきたのですが、 先が短くなって来たのだからボートをもう一度楽しもうと思ったからです。
  私がこの歳でレースに参加しようと考えたのにはもう一つの理由があります。この数年私はボート指導者の講習会講師を続けて来ました。私の受け持つのは「ボートの構造と取扱い」と言った内容なのですが、構造を 考えると、そもそもボートはどの様な原理で動くのか、なぜこの構造があるのかと言う問題に行き当たります。
  しかし、重要と思われるこの点を取り上げた科目が無さそうなのです。そこでこの部分も含めて話をする為、様々な考察をして講義内容に上げて来ました。この点を自分でボートを漕ぎながら確認してみようとの考え方が あったからです。さすがに若い選手達とは違いますから早く漕げるわけではありませんが、確認できた事は多く、新しく気付くことも出てきます。ガムシャラに漕いでいた頃とは大きくイメージが変わりました。
  さてレースに参加するとなるとトレーニングは欠かせません。近年は年2・3回漕ぐ程度でしたからトレーニングとは言えず、とりあえず週2回を目標に始める事にして、先ずはジョギングを始めたのですが走るとはほど 遠い現実を知ることになります。しかしボートを漕いでみると意外に漕げます。ボートも水泳と同じで体重を足で支えるスポーツでは無いからです。この歳でボートと言うスポーツの特性を知ることになりました。
  最初に参加するレースは全日本マスターズレガッタ、今年は大阪府高石市の浜寺ボートコースで6月1~2日開催されます。私の参加種目はシングルスカル(1人漕ぎ)、この大会は年齢別に細かくカテゴリーが分けられて いるので相応の相手とのレースが出来ると考えたからです。私は57歳なので55~59歳のカテゴリーです。
  ボートは自艇で30年前に広島アジア大会に用意されたアメリカ製、私は3代目オーナー。本業の研究用に所有していたもので、改修を重ねてきたものを大会参加の為大改修、新造時の面影は無く30歳のボートと見る人は誰もいないでしょう。私の体の方はと言うとトレーニング効果を得るまでに至らず、体のあちこちに痛みを抱えながら大会に参加することになりました。大会参加には体調に留意し自己責任において参加する由の誓約書提出が必要です。無理はすまいと言い聞かせてレースに臨みました。
    いよいよ出廷レースは1000m、5人で競うのですが他の選手の実力はまったく不明、何よりも38年振りのレースです。競漕規則も変わりスタート号令は「アテンション・ゴー」英語になっています。要領が良く解らない為、スタートダッシュは出遅れ・・1人先行した様だ・・真直ぐ進めていない・・このペースで漕いでは無理・落ちそう・・半分過ぎたが私が先頭だ・・ラスト100mと思った時ゴールのブザーが聞こえました。私が距離表示を間違えていた様です。レース運びは散々、でもレースは勝ちました。恥ずかしながらメダルを頂き何か申し訳ない感じでした。来年もぜひ参加しよう。もっとトレーンングを積んで、ボートをもっと改良を進めて、どうだと胸を晴れる様に。この歳でそんな気持ちを持って良いかとも思いますが、前向きな気持ちを得る事が出来ました。
  複数で漕いでいる方々は皆で楽しく漕いでいるようです。それはそれ、私は私のボートの楽しみ方をします。
  今回新たな方々と話をすることができました。私のやろうとしている事を多少でも知ってもらえる機会にもなったと思います。来年は石川県津幡ボートコース、昔 指導していた高校生がインターハイで2位に入賞した所です。なつかしい所で私も頑張ってみましょう。
  今回初めてマスターズの大会に参加したのですが、開催地のボランテイアの役員の方々には頭が下がります。
どんなスポーツでもそうですが、参加者が楽しむ為には、多くの労力が必要になります。参加者側も開催地の負担を踏まえた上での参加が必要でしょう。私も心して長く楽しませていただきたいと思いました。
  さあ 来年に向けてのスタートです。