近江商人の理念と商法

 
令和5年5月1日
中村 文雄(近江八幡市出身 さいたま市在住)
  「三方よし」 の原典とされる、中村治兵衛宗岸の遺言状。
宝暦4年自分の孫に名にあてた直筆の遺言状の一部
  「・・たとえ他国へ行商にでかけても、自分の持参した衣類などの商品は、でむいていったその国すべての顧客が気持ちよく着用できるようにこころがけ、自分のことよりも先ず、お客さまのためを思って計らい、一挙に多くの利益を望まないで、何事も天の恵み次第であると謙虚な態度であること。ひたすら商品をお届けした地方の人々の事を大切に思って商売しなければならない。そうすれば天道にかない、心身とも健康にくらすことができる。自分の心に悪心の生じないように、神仏への信心を忘れないこと。
  持ち下り行商に出かける時は、以上のような心がけが 一番大事なことである。・・・」
NPO法人三方よし研究所

  売り手よし 買い手よし  商品を売ったら利益を求めることは当然ですが、自分の事ばかりを考えて高利を望んではならないと、家訓の中で心を込めて諭しています。    
  その商品を購入した人にとっても「好い買い物をした」という気持ちになるような商いが大切なこととしています。売り手と買い手の関係を円滑に行うことだけでなく、双方が喜ぶ、これが「売り手よし」「買い手よし」ということです。
  さらに世間よしについては出かけた地域の産業が盛んになるように努めるなど、積極的に地域貢献したことが受け入れられました。
  地域のおかげ、社会のおかげ、を実践した近江商人が大切にしていたことは陰徳善事ということばです。
  地域のおかげ、社会のおかげ、を実践した近江商人が大切にしていたことは陰徳善事ということばです。 陰徳善事 とは、人知れずよい行いをするという意味で、近江商人に広く尊ばれていた言葉です。商いで得たお金で、道や橋を修復したり、学校や病院をつくったりして、社会奉仕のために役立てたのです。
  しかしその見返りを求めることはなく、むしろそれを望むことを厳しく戒めています。
自分が今日あるのは社会、世間のおかげであって、その恩返しとして社会に戻すという行いは、何代にもわたって事業の拡大を行っていく中で、自分には計り知れない社会の恵みに感謝する気持ちを表しています。